HOBIA NEWS No.304

目次
●  2014全国バイオ団体交流会議報告
●  2014新年例会報告(その2)
●  地域バイオ育成推進講座in札幌 (3月25日)開催案内
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●  全国バイオ団体交流会議報告 2014.1.15(JBA会議室にて)
  JBA主催の全国バイオ団体交流会議は、1年半前のBioJapanから、交流会の方向性も探る交流を続けている。全国にあるバイオ団体が、それぞれの地域に、そして全国になにが貢献できるかを基調として議論が行われた。まだ問題点の掘り起こしの段階であり、一方で経産省からの強いメッセージも頂いている。
 江崎課長(経済産業省製造産業局生物化学産業課)の話は、いつもクリアーかつ具体的で、わかりやすい。昨年に引き続き、医療とその周辺分野への積極的なサポート、規制緩和の姿勢を示した。
 再生医療への期待は大きい。再生医療の2本柱は、体細胞に遺伝子導入して作るi PS細胞と元の組織から抽出する間葉系細胞であるiPS細胞は、研究レベルはトップだが応用は米国、韓国に後れを取っている。
 再生医療の実現に向けて、3つの新法が成立した。議員立法で成立した「再生医療推進法」では、今まで医者がすべての行為を行わなければならないとしていたものを「外部委託」できるようにした。細胞を増やす作業を医者でなくとも合法的にできるようになり、医者の負担軽減、企業の本分野への参入が可能となった。時間短縮、関連企業拡大で再生医療を加速できる。「再生医療等安全性確保法」の成立によって、治療計画を審査する委員会を病院などの設け医療機関の計画を審査する。メンバーは医療専門家、法律家や市民も加えるとされ再生医療への法整備を進めた。
 薬事法が改正され「医薬品医療機器等法」の成立によって、今まで膨大な年月がかかっていた「審査・承認」が早期に進めることが可能となった。大幅な期間短縮を期待している。
 再生医療なかでも自家細胞による治療を達成するには、多数の作業が必要である。細胞採取→病院から企業へ輸送→遺伝子導入→幹細胞作成→培養→組織形成→病院へ輸送→移植手術。いくつもの必要な作業のうち病院以外は、企業が行えるようになったことで、再生医療の現実性が高まった。幾つもの作業には、種々の高度バイオ機器が必要であり、これらの開発製造にも日本企業が参入できる環境を提供した。現在ほとんどの機器やDNA抽出キット、培地など消耗品も外国製ほとんどで、バイオ分野での輸入超過を解消したい。再生医療および関連分野の国内市場規模は、2030年1.5兆円と試算している。従来の医薬医療企業の他に化学・材料関連企業、装置企業もこの分野への参入を促している。開発を期待している国産機器・消耗品の国際競争力をつけることも重要だと認識しており、標準化作業JSRM(国内)、ISO(国際)の活動も積極的に行う。再生医療の産業化にむけた評価基盤技術開発事業として25億円のH26予算を申請している。
 創薬分野にも積極的な支援をしてゆきたい。高齢化の進行とともに癌やアルツハイマーなど難治療の病気が多くなって医療費の増大に拍車をかけている。一方、制がん剤の重篤な副作用など治療そのものに問題も多い。癌の治療では、費用対効果が、60歳以上の患者で急激に減少しているという統計データも出ている。さらに、医薬でも大幅な輸入超過で日本のバイオの力が低下していることを危惧している。あらかじめ治療効果を測定するコンパニオン診断薬の開発や、抗体医薬などいわゆるバイオ医薬の開発に52億円の支援を予算申請している。
 各地のバイオ団体からの報告議論が行われた。昨年のBioJapanで判ったが、日本でのバイオ人材の集積は、桁違いに低い。神奈川は人材が多い方だが5300人だが、提携を結んだサンディエゴのバイオクラスターは、2万人レベルである。日本中のバイオ人材が全て集まってサンディエゴに相当するくらいだ。それぞれの地域での活動も大切だが、日本全国としてJBAをまとめ役として日本のバイオ人材がネットワークを作れるようにすることが対抗策だろう。全国会議での議論の進め方も、現在は各地の報告が主で、テーマを出してもらって議論が必要だろう。

出席 企画運営委員長 浅野行蔵

●  2014年新年例会 講演会の報告 (その2)
「大学発ベンチャー成功の裏側と意外と多いチャンスの見つけ方」
                 株式会社ヒューマン・キャピタル・マネジメント                                             代表取締役社長 土井尚人氏

 札幌のベンチャーを育て大きな利益もあげた土井氏が、ベンチャーの成功の視点について熱く語ってくれた。「なぜインキュベーションを始めたか?」神戸出身の土井さんは、だからこそ北海道にあったチャンス移住者(よそ者)の視点で、掘り出すことができたと語りだした。
 インキュベーションの会社であるヒューマン・キャピタル・マネジメントを12年前に立ち上げたが、創業前にフランス、ドイツ、アメリカ、日本各地で学んだことを大切にしてきた。この会社の事業は、「医学技術・理学技術・農学技術・工学技術等」の分野において、「地域にある良い素材」+「経営技術」ここを中心に行う北海道と神戸を拠点に活動する企業です。
 大切にしているのは、「ものの見方、考え方」です。注意して避けていることは、①自分の経験に頼ってしまう。②得意な分野に持ち込もうとする。③業界や地域に染まる。
 そもそもインキュベーションとはどんな仕事か?意外に知られていない。コンサルティングとは根本から違う。方向性を与えてくれたのが、ピーター・ドラッカーの経営哲学です。
 第一に会社の「あるべき姿」を認識する。そして現状を見つめて、何が足りないのか?どうすればあるべき姿に到達できるのか?という思考法を取る。現状の改良という考え方は取らない。彼の言葉の中で常に意識しているのは、①
事業とは顧客の創造である、② 買わないことを選択できる第3者が喜んで自らの購買力と交換してくれるものを供給することである、③ 顧客は常に自分にとって正しい価値判断を行い、購買を決める、④
利益は企業活動継続の条件である。
「顧客からスタートしなければならない」
 大学は新規な技術がいろいろあって魅力ある場所です。一方、大学の先生方の見方が顧客へは向いていないので(学問の目的が異なるから当然ですが)、よもや自分の技術が世間に応用できるとは思っていないし、応用しようと考えている先生も顧客が見えているわけではない。違う視点を持つことがとっても大切です。演者は、若い女性にも老婆にも見える絵を示して、いったん思い込むと他の面が見えなくなる怖さを強調された。
「技術が絶対的成功要因」
 
成功する事業は3つの要素が不可欠である、顧客があること、技術があること、インフラがあること。まずは優れた技術が絶対条件(強み)で、優れた研究員がいること。そして、優れた技術を活かして、調達できる資源で完成品をつくることのできるインフラを備えていること。最後に、どのように収益を回収するかのモデル、つまり早期に売上を上げる回収モデルを作れるか。
「上手なアライアンス」
 小さな企業にとって他社との提携は重要な要素だが、そのあり方は成功の可否に大きく影響する。右図で示したように、向かうところは業務に重なる部分を少なくくっつくように広い接線、接面があるアライアンスが成功する。アライアンスによって、①弱みを他者に補ってもらい自らの弱みを消すことができる、②自らの強みを持つ場所でより有利に活動できる、③自らの強みで他者の弱みを消す、をめざすことです。一方、弱みを補っても平凡にしかならない。強みを基盤にすれば、優れた価値を創造できるのです。
「神戸支店を出して良かったこと」
 神戸のポートアイランドで展開されている再生医療プロジェクトに乗って、神戸支店を出した。出してみたら、予想していなかった良いことがあった。神戸市は、極めて積極的に医療産業都市構想を進めており、特に再生医療に集中した集積を図っている。神戸に支店を出すことによって、異なった視点を得ることができた。これは大変大きな収穫であり、新たなる出発点を得られた。
 北海道経済の可能性は、大きいと考えている。視点を変えて見直してみると、北海道には有形無形のモノがある、眼の前に財産がある。そして考えるべきことは、「無」から「有」を生み出せるか?です。アイデアができれば、「ヒト」が居る、そして「ヒト」を呼べる良い環境です。神戸支店開設から改めに北海道が見えてきています。
 ヒトというものは、とかく過去を大げさに評価し、現在を過小評価し、未来は過大評価しやすいという性質を持っています。それを忘れず、だから今日やるべきことを今日してしまう、今日出来ないものは明日も出来ないことが多い、と未来を予測する一つの方法と心して仕事を進めております。 

●  地域バイオ育成推進講座in札幌開催のご案内

開催日時:平成26年3月25日(火)15:30~17:00
開催場所:R&Bパーク札幌大通サテライト/HiNT
      (大通西5丁目8番 昭和ビル1階 地下鉄大通駅1番出口)
参加費:無料
講 演 「高感度抗体の多様性-食品分析からメタロチオネインまで」
                (株)フロンティア研究所 カスタマーサポート部
                                                    取締役部長 加藤美穂子氏
概要: 特異反応性を持つ高感度抗体は、治療、診断から、食品分析等までも可能にする有力なツールである。弊社が開発した残留合成菌剤検出キット、食品分析における前処理用カラムの他、重金属感受性タンパク質であるメタロチオネインの測定まで抗体の応用範囲について説明する。
 主  催   地域バイオ推進実行委員会
 参 加 者  30名程度(先着順)
 申  込  3月20日(木)まで、FAXまたはメールアドレスでお申し込み下さい

参加申込書      

氏名 所属 役職
     
     

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