HOBIA NEWS No.306

目次
●  HOBIA平成26年度総会・例会開催のお知らせ
●  地域バイオ育成推進講座in札幌 (3月25日)報告
●  平成26年研究成果発表会を終えて(食品加工研究センター)

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●  HOBIA平成26年度総会・例会 開催のお知らせ
  開催日時:平成26年6月18(水)13:00~19:05
  開催場所:TKPガーデンシティアパホテル札幌
         (札幌市中央区南2条西7丁目10-1)
  ■総会 13:00~14:00
  ■例会 14:15~17:10
   ● 基調講演 「本当のイノベーションをつくるには」  
        北大産学連携本部 教授 荒 磯  恒 久 氏
   ● 新会員紹介プレゼンテーション
      ・アメリカ穀物協会     浜 本  哲 郎  氏
      ・(株)アンビックス  

  ■懇親会 17:15~19:05   (参加費¥4,000)
   ※ 詳細はあらためてご案内申し上げます。

●  地域バイオ育成推進講座in札幌 (3月25日)報告
   (R&Bパーク札幌大通サテライト/HiNTセミナー室にて)
講演「高感度抗体の多様性-食品分析からメタロチオネインまで」と題して、(株)フロンティア研究所カスタマーサポート部取締役部長の加藤美穂子氏にお願いしました。お話の内容を下記にまとめました。
概要: 特異反応性を持つ高感度抗体は、治療、診断から、食品分析等までも可能にする敏感な方法です。弊社が開発した残留抗生物質検出キット、食品分析における前処理用カラムの他、重金属感受性タンパク質であるメタロチオネインの測定まで抗体を応用した商品についての開発経過の説明です。

 会社の歴史は、試薬や理化学機材の販売から始まり、DNA合成業務などを経て、現在に至っている。フロンティアサイエンスから研究部門を分離して、フロンティア研究所として独立した。小さい会社なのでニッチを狙って差別化できる個性ある仕事をしてゆかねばと課題を探し、得意技を生かした開発を行っている。得意技の一つは、分子量の小さい分子を抗原とした特異抗体の作成です。抗原として認識されるのは、通常分子量500以上とされていますが、200~300の低分子でもエピトープ(抗体が認識して結合する抗原の特定の構造単位)として認識できる特異抗体の製造法を得意技として開発を進めてきました。抗原となる物質は、抗原提示細胞(APC)に分解されながら取り込まれて、その後、細胞表面に抗原情報が提示され、ヘルパーT細胞で特異抗体が作られる。小さい分子量の抗原の場合は、分解されることなく抗原提示細胞にそのまま取り込まれて、そのまま細胞表面で提示されるのではないか、と仕組みを考えている。
 このように作られてきた複数個の抗体から「適切な抗体」を選ぶステップが次である。適切とは、抗体をどのように利用するかの用途によって異なる。ELISAで反応させ「検出」することが目的か?あるいは、前処理用カラムとして抗体カラムを作って、「選択的濃縮」をするのが目的か?によって、抗体の耐久性など要求される性能が変わってくるのです。

これらの技術を使って開発した商品を紹介します。

1)キノロン系抗生物質検出キット
 キノロン系抗生物質は、ベータラクタム系に続いて多量に使用されている抗生物質です。ウナギの感染症予防に使われたり、中国産蜂蜜(黄荊条)にも使われている可能性があり、ローヤルゼリーにも含有されているとの情報があり、キノロン系の抗生物質の検出が簡単に高感度でできると役に立つと考え前処理の濃縮用抗体カラムと検出用のELISAキットの開発を行った。
 従来は、キノロン系の抗生物質の濃縮には、ジクロロメタンなど有機溶媒が必要であったが、開発した抗体カラムを用いると簡単に水系で濃縮でき1回の濃縮で高い倍率を達成できる商品となった。
 同様な方法でほかの抗生物質検出キットも考えたがクロラムフェニコールやサルファ剤は、すでに他社で高感度品が出ていたので断念した。

2)アフラトキシンの検出キット
 アフラトキシンB1は、カビ毒で最も強い発がん作用を持った天然物です。国内では少なく、熱帯地域に頻繁に現れるカビです。輸入食材が増加する中、簡単な操作でしかも高感度での毒素検出にはニーズが増加している。弊社では、総アフラトキシン含量を測定するELISAキットを発売している。

3)赤カビ毒素の検出キット
 赤カビは、温帯地域そして北海道でもしばしば発生して小麦などで問題になっている。毒素は、デオキシニバレノール(DON)で、これも低分子化合物で通常は抗体ができない。水酸基のついたニバレノール(NIV)も問題になっており、弊社では、両毒素を合わせて定量できるキットの開発に成功した。赤カビは、北海道でもしばしば検出されるので、この商品を使って検査したところ牛のサイレージの中にかなり高いレベルで汚染されている実例も検出した。昔から赤カビ汚染したえさを家畜が食べると嘔吐や下痢になった例が知られており、北海道での汚染も証明することができた。サイレージの作り方がまずいと赤カビ汚染が広がるようです。また、配合飼料やビール原料など海外から大量に輸入されている穀類の現場での迅速測定が可能で関係会社で使われ始めている。さらにNIVを現場で検出できる検査キットはほかになく、世界初めての商品です。

4)メタロチオネインⅢ検出キット
 メタロチオネインは、脳内に存在する分子量7千の小さなタンパク質で、システインを20個以上含むという変わったタンパク質です。システインが多いので銅イオンをたくさん抱き込む性質がある。一方、アルツハイマーの脳では、メタロチオネインⅢが多く分泌していることが知られており、病気の指標となりうるタンパク質です。
 銅は動物にとって必須の金属です。しかし過剰でお不足でも病気が起こります。過剰に蓄積する遺伝病は、ウイルソン病で、脳・肝臓・腎臓・眼などが冒される病気です。遺伝性代謝疾患ですが、銅を抱え込んでいるメタロチオネイン量を検査して早期発見により発症を予防することもできる。銅が不足する病気はメンケス病で、銅輸送ATPase遺伝子異常症で、銅欠乏により重篤な中枢神経障害、結合織障害をきたすX染色体劣性遺伝性疾患です。これらの病気を早期に発見することで治療や生活改善に役立ちます。カドミウムもメタロチオネインに取り込まれる金属で、土壌中のカドミウム蓄積が多い地域での試験では、尿中カドミウムと尿中メタロチオネイン量が比例していた。
弊社のメタロチオネイン検出抗体は、ヒトだけでなく各種動物種で使えるので、金属の関係する疾患の発見、予防、治療経過の確認などに使用できます。
 低分子でも抗原として特異的に認識できる抗体を作る弊社の得意技を用いて、今後も商品開発を行い世の中に役立つ検査キットを作っていく予定です。

●  平成26年研究成果発表会を終えて

過日、5月15日に東京ドームホテル札幌にて当北海道立総合研究機構食品加工研究センターの「平成26年研究成果発表会」を開催し、盛会の内に終了することができました。会員の皆様にも多数ご参加いただき、厚く御礼申し上げます。最終的な参加者の数は289名となり、会場もゆとりのある席の配置としましたので、ゆっくりご覧いただけたのではないかと思います。
口頭発表5題、ポスター発表6題の他、技術支援課の実績の報告や新たな事業展開のお知らせ、保有特許とその利用事例のポスター掲示などをさせていただきました。また、昨年から力を入れている道立の協力機関からの発表も多数あり、道内各地の活動状況もお知らせすることができました。共同研究や技術支援の成果を利用して開発された食品の試食コーナーには、5社から8品目のご提供があり、沢山の情報をご提供できたのではないかと存じます。来年も、同時期に同じ会場での発表会ができるものと思いますので、またのご参加をお待ち申し上げます。

 

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